リハビリテーション部の概要
リハビリテーション部は脳血管疾患、整形外科疾患、がん疾患、呼吸器疾患、心疾患などに対して、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士の3部門が連携を取りながら専門性を発揮します。心身機能回復、日常生活動作の再獲得、家庭・社会復帰支援などに取り組んでいます。また、医師・看護師・医療福祉相談員などと協力し、チームアプローチを実践していく事で日常生活が円滑に行えるように心掛けています。
施設基準と疾患別リハビリテーション対象疾患について
施設基準 | 対象疾患 |
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脳血管疾患リハビリテーション料(Ⅰ) | 脳梗塞、脳出血、くも膜下出血、脳外傷、脳腫瘍、脊髄損傷、多発性神経炎、多発性硬化症、末梢神経障害、パーキンソン病、脊髄小脳変性症その他の神経筋疾患、失語症、失認及び失行症並びに高次脳機能障害の患者 |
運動器疾患リハビリテーション料(Ⅰ) | 上・下肢の複合損傷、脊椎損傷による四肢麻痺(1肢以上)、体幹・上・下肢の外傷・骨折、切断・離断(義肢)、運動器の悪性腫瘍等、関節の変性疾患、関節の炎症性疾患 |
呼吸器疾患リハビリテーション料(Ⅰ) | 肺炎、無気肺、肺腫瘍、胸部外傷、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、気管支喘息その他の慢性の呼吸器疾患 |
心大血管疾患リハビリテーション料(Ⅰ) | 急性心筋梗塞、狭心症発作、心大血管疾患又はその手術後の患者。慢性心不全、末梢動脈閉塞性疾患、慢性の心大血管疾患 |
廃用症候群リハビリテーション料(Ⅰ) | 急性疾患等に伴う安静による廃用症候群の患者で一定以上の基本動作能力、応用動作能力、言語聴覚能力及び日常生活能力の低下を来しているもの |
がん患者リハビリテーション料 | 入院中にがん治療の手術、化学療法、放射線治療又は造血幹細胞移植が行われる予定の患者又は行われた患者 |
リハビリテーション部の役割
急性期から回復期・維持期、在宅復帰に向けての総合的なリハビリの実施を心掛けています。
急性期リハビリテーションでは、各療法士がリスク管理を行い早期離床と廃用防止を目的に介入、安全にリハビリテーションを提供して早期運動機能回復と早期退院を目指します。
急性期終了後の在宅復帰が難しい患者さんには、在宅復帰を目標に回復期リハビリテーション病棟へ移っていただき、病棟でのチームアプローチと集中的なリハビリテーションの提供で運動機能向上や日常生活能力向上を図ってまいります。
地域包括ケア病棟では回復期リハビリテーション病棟対象外の疾患で急性期治療が終了したが、すぐに自宅や施設等での療養に移行するのに不安があるリハビリテーションが必要な患者さんに対して、在宅復帰を目標にリハビリテーションを提供しています。
退院後に在宅生活が不安な患者さんには維持期として訪問リハビリテーションの提供も行っています。
各療法について
- 理学療法
- 理学療法では、病気・怪我などで身体が不自由になった人に対し、身体と心の両面からはたらきかける療法の一つです。関節の運動を円滑にしたり、筋力を向上させたりする「運動療法」、寝返る、起きる、座る、立つ、歩くなどの「基本動作」の助言・指導・訓練を早期より行います。また、心臓リハビリ、呼吸リハビリ、スポーツ部門に専門的な資格と知識を持ったスタッフも配置しており、状況に応じて対応いたします。
- 作業療法
- 作業療法では「日常生活動作・遊び・仕事・睡眠」といった、人々が行う全ての営みが病気や怪我で出来なくなった方に対して、再び出来るようになり、その人らしい生活を再構築出来るように支援をしていきます。実際の生活場面(トイレ、入浴、調理、洗濯など)や仕事で必要な場面を、繰り返し練習をする事や、様々な道具を使用し手が使いやすくなるように練習する。また、興味のある事や趣味を通しての心のケアを行うといった、その方にとって必要な作業を通しての包括的な支援を行っております。
- 言語聴覚療法
- 言語聴覚療法では、言葉や嚥下に障害のある方を対象に訓練をします。ろれつが回らない、思うように言葉が出ない、思っている事と違う言葉が出てしまうなどの様々な症状に対して、言葉の訓練をしています。また、嚥下障害がある方に対して、多職種と連携し嚥下評価や食事場面への介入・訓練をしています。
疾患別リハビリテーションについて
- 運動器疾患リハビリテーション
- 骨折・変形性関節症・脊椎疾患・スポーツ障害などの骨・関節疾患などの患者さんに対して行われるリハビリテーションです。低下した筋力や制限された関節の動きを改善し、運動機能回復や日常生活動作獲得、スポーツ復帰を目標とします。理学療法では運動療法、物理療法、歩行訓練を行います。作業療法では上肢の運動療法、日常生活動作訓練を行います。
- 脳血管疾患リハビリテーション
- 脳卒中や脳腫瘍、神経疾患などの患者さんに対して行われるリハビリテーションです。
片麻痺、高次脳機能障害、言語・嚥下障害の改善を目標とします。理学療法では運動機能訓練、バランス訓練、基本動作訓練、歩行訓練などを行います。作業療法では上肢を中心とした機能訓練、更衣動作・食事動作・トイレ動作・入浴動作などの日常生活動作訓練を行います。言語聴覚療法では言語機能・高次脳機能・摂食嚥下機能の評価・訓練を行います。 - 呼吸器疾患リハビリテーション
- 肺炎、無気肺、肺腫瘍、胸部外傷、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、気管支喘息その他の慢性の呼吸器疾患などの患者さんに対して行われるリハビリテーションです。個々の患者さんの状態や内科疾患からの影響に配慮し、運動負荷量の調整をします。発症直後は呼吸訓練・排痰法を開始、徐々に筋力トレーニング、歩行訓練、日常生活動作訓練を行っています。
- 心大血管疾患リハビリテーション
- 急性心筋梗塞、狭心症発作、心大血管疾患又はその手術後の患者、慢性心不全、末梢動脈閉塞性疾患などの患者さんに対して行われるリハビリテーションです。運動負荷試験(CPX)の結果をもとに、医師が個々の患者さんに応じた運動処方を行い、心臓リハビリテーション指導士が医師・看護師と共同して安全管理した上で、段階的に運動負荷量を延ばしていくリハビリテーションです。
- 廃用症候群リハビリテーション
- 急性疾患等に伴う安静による廃用症候群の患者で一定以上の基本動作能力、応用動作能力、言語聴覚能力及び日常生活能力の低下をきたした患者さんに対して行うリハビリテーションです。患者さんよって症状や能力が異なり、原因も外科的要因・内科的要因・加齢的要因など様々です。主治医からの依頼で担当療法士が患者さんに応じた、筋力強化訓練・基本動作訓練・日常生活動作訓練を提供致します。
- がん患者リハビリテーション
- 入院中にがん治療の手術、化学療法、放射線治療又は造血幹細胞移植が行われる予定の患者又は行われた患者さんに対して行うリハビリテーションです。がん治療で生じる運動機能低下、身辺動作及び日常生活動作能力低下、嚥下機能低下などに対して、がんのリハビリテーション研修会終了した理学療法・作業・言語聴覚士がリハビリテーションを提供いたします。
回復期リハビリテーション病棟と地域包括ケア病棟について
- 回復期リハビリテーション病棟
- 急性期治療を終了した脳血管疾患、骨折などの回復期リハビリテーション病棟入棟対象疾患の患者さんに対して、一年間を通じて365日休む事無く集中的なリハビリテーションを提供、寝たきり防止と家庭復帰を目的としたリハビリテーションを提供しています。
リハビリスタッフは理学療法士7名、作業療法士3名、言語聴覚士1名を配置。 - 地域包括ケア病棟
- 急性期治療が終了したが自宅での療養生活に不安があり、自宅の住環境整備に期間が必要となる患者さんを対象とした病棟です。回復期リハビリテーション病棟の対象疾患に含まれない患者さんを対象としています。
リハビリスタッフは専従理学療法士1名を配置。
回復期リハビリテーション病棟の対象疾患
- 回復期リハビリテーション病棟の対象疾患
- 脳血管疾患、脊髄損傷、頭部外傷、くも膜下出血のシャント術後、脳腫瘍、脳炎、急性脳症、脊髄炎、多発性神経炎、多発性硬化症、腕神経叢損傷等の発症後もしくは手術後、又は義肢装着訓練を要する状態
- 高次脳機能障害を伴った重症脳血管障害、重度の頸髄損傷および頭部外傷を含む多部位外傷
- 大腿骨、骨盤、脊椎、股関節又は膝関節、2肢以上の多発骨折の骨折又は手術後
- 外科手術又は肺炎などの治療時の安静により廃用症候群を有しており、手術後又は発症後
- 大腿骨、骨盤、脊椎、股関節又は膝関節の神経、筋又は靭帯損傷後
- 股関節又は膝関節の置換術後の状態
- 入院可能期間
- 150日
- 180日
- 90日
- 90日
- 60日
- 90日
実績
2019年 | 2020年 | 2021年 | 2022年 | 2023年 | |
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リハビリテーション施行単位数 | |||||
一般 PT | 28,504 | 52,138 | 72,720 | 65,991 | 50,073 |
一般 OT | 21,693 | 29,592 | 36,489 | 30,493 | 24,024 |
一般 ST | 7,481 | 8,947 | 11,832 | 11,062 | 8,601 |
回復期 PT | 35,145 | 24,384 | - | - | 16,826 |
回復期 OT | 17,299 | 11,195 | - | - | 8,087 |
回復期 ST | 4,512 | 3,379 | - | - | 2,650 |
包括 PT | 24,077 | 10,121 | 4,368 | 6,312 | 8,202 |
心大血管リハ | 6,222 | 5,798 | 5,693 | 4,750 | 4,746 |
マッサージ師 | 2,918 | 2,647 | 2,491 | 317 | 0 |
合計 | 147,851 | 148,201 | 133,593 | 118,925 | 123,209 |
訪問リハビリテーション実施回数 | |||||
PT | - | - | 1,050 | 1,048 | 1,186 |
OT | - | - | 1,187 | 906 | 903 |
合計 | - | - | 2,237 | 1,954 | 2,089 |
スタッフ構成
リハビリテーション部の変遷と方針
リハビリテーション部の理念は患者さんの立場に立つことであり、各専門職種と連絡をとりあい、綿密な計画に基づいたチームアプローチの実践と質の高いリハビリテーションの提供を基本方針としています。
当院のリハビリテーション部は社会的なリハビリテーション需要の高まりから拡大をしてまいりました。
2004年6月 回復期リハビリテーション病棟を開設、在宅復帰に向け回復期機能を新たに拡充して在宅復帰に寄与しています。
2015年11月 地域包括ケア病棟を開設、回復期リハビリテーション病棟入棟対象外で在宅復帰にリハビリテーションが必要な患者さんに対しリハビリテーション提供を行っています。
2017年6月 心大血管リハビリテーションを運用開始、心疾患の患者さんに身体機能回復・社会復帰・再発防止を目的とし、医師・看護師と共同して安全管理した上でリハビリテーションを提供しています。
2020年6月 訪問リハビリテーション開始、維持期への対応も行っています。
今後も当院リハビリテーション部は地域と相互に連携を図り、機能回復から維持期までの幅広いリハビリテーションを提供してまいります。
リハビリテーション部
療法士長 理学療法士
福島 賢二