口腔管理・食支援センターの概要
食支援・口腔管理センターでは「食」に関する各分野のスペシャリストおよび歯科医療者が在籍しており、多職種が連携して入院中・退院後の食支援、口腔管理を実施しております。
当センターの特徴
- 1「食」に関する各分野のスペシャリストが在籍しているため、より専門的な検査、診断、訓練を実施
- 2「食べる」を叶えるため、摂食嚥下(せっしょくえんげ)サポートチーム:SSTの多職種が密に連携し、最適な方針をご提案
- 3「歯科」が全病棟に介入し、医科歯科連携・口腔管理を徹底することで、誤嚥性肺炎および全身への有害事象を低減
主な対象疾患
病名 |
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摂食嚥下機能障害(摂食機能障害)、口腔機能低下症 起因疾患:誤嚥性肺炎、脳血管疾患、神経筋疾患、頭頸部腫瘍、廃用症候群(消化器疾患、循環器疾患、腎疾患、骨折、加齢など)、周術期等口腔機能管理 |
周術期等口腔機能管理 起因疾患:全身麻酔手術または化学療法・頭頚部放射線療法 |
緩和療法の期間中に問題となる口腔疾患(齲蝕、歯周疾患、口内炎・口腔粘膜炎、口角口唇炎、口腔剥離上被膜、舌苔・黒毛舌など) |
診療内容
- 1食支援・摂食嚥下リハビリテーション
- 2入院中の歯科治療・口腔管理(口腔機能・口腔衛生管理)
- 3周術期等口腔機能管理
構成員
医師、歯科医師、管理栄養士、看護師(摂食嚥下障害看護認定看護師)、言語聴覚士、薬剤師、歯科衛生士
活動内容
- 1口腔機能評価および摂食嚥下機能精密検査の実施
- 2摂食嚥下サポートチーム:SSTによる専門的なカンファレンスの開催
- 3カンファレンス内容に基づいた多職種による食支援の実施
- 4全病棟の口腔内スクリーニングと口腔管理、周術期等口腔機能管理
- 5嚥下障害の疑いがある方の2週間短期入院「嚥下パス」の導入
主な検査と治療について
- 嚥下造影検査(VF)
- 嚥下造影検査はX線を使用して、摂食嚥下障害の有無や程度を判定する検査の一つです。摂食嚥下障害が原因で液体や食物が誤って気管に入ってしまう「誤嚥」や気管を閉鎖してしまう「窒息」を繰り返すことで誤嚥性肺炎を発症したり、最終的に死亡するリスクが増加します。そのため、本検査では現在の機能とともに安全に摂取できる食物形態・体幹の角度・訓練法を検討します。造影剤の入った少量の液体や食物をご本人に摂取していただきます(ご本人の負担は軽微です)。
- 嚥下内視鏡検査(VE)
-
嚥下内視鏡検査は嚥下造影検査と同様に、摂食嚥下障害の有無や程度を判定する検査の一つです。本検査では現在の機能とともに安全に摂取できる食物形態・体幹の角度・訓練法を検討します。嚥下造影検査と検査できる項目が異なるため、より正確に機能を判断するため、両方の検査を実施することがあります。のどのみを検査する非常に細い内視鏡を使用して検査します(ご本人の負担は軽微です)。
- 口腔機能精密検査
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口腔機能を数字で「見える化」するための検査です。口腔の湿潤度、舌の力、咀嚼の力、話す速度などを計測する10分程度で終わる検査です。
- 多職種によるカンファレンス・食支援
- 多職種で構成される摂食嚥下支援チーム:SSTのメンバーを中心としたカンファレンスを実施し、栄養サポートチーム:NSTとも連携しながら、安全に「食べる」を叶えるための最適な方針をご提案します。
- 2週間短期入院「嚥下パス」
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地域で療養している方を対象に、短期入院による嚥下評価を多職種で行い、適した食物形態・体幹の角度・訓練法をを提示し、少しでも長く・安全に経口摂取ができるよう指導しています。
嚥下パスの特徴は以下です。- 1多職種で摂食嚥下評価を行い、多角的評価を行う
- 2多職種によるカンファレンスを定期的に開催し、入院中の情報を共有する
- 3入院中の経過によって、退院後の食事形態や嚥下リハビリを指導する
- 4退院前カンファレンスの開催により地域連携を図る
- 歯科訪問診療
- 当院に入院・外来受診されていた方で継続した食支援・リハビリテーションが必要な方、通院が困難な方で摂食嚥下障害の疑いがある方を対象に、歯科訪問診療を実施しています。尚、当院では食支援・摂食嚥下リハビリテーションを中心に行い.普段の口腔ケア・歯科治療が必要な際は歯科医師会の先生方をご紹介させていただきます。
- 周術期等口腔機能管理
- 全身麻酔手術の術前・術後(気管挿管時の歯の脱落予防や歯の保護、誤嚥性肺炎予防、手術部位が口腔に近接する場合は創部感染の予防など)、化学療法期間中・頭頚部放射線療法期間中(歯性感染源の除去、齲蝕・歯周病の発生や悪化の予防、口腔粘膜炎の痛みの緩和、誤嚥性肺炎予防など)、緩和ケア中の口腔管理を行っています。
- 病棟往診口腔衛生管理(口腔ケア)
- 欠食または経管栄養で、セルフケアが不可能または困難な方を対象に、ベッドサイドで歯科衛生士または歯科医師が口腔衛生管理を実施して、口腔環境の改善や誤嚥性肺炎の予防を行っています。
実績
食支援実績
2020年 | 2021年 | 2022年 | |
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新患数 | 144 | 184 | 247 |
介入数(総数) | 1780 | 2286 | 3063 |
VF実施件数 | 152 | 127 | 226 |
VE実施件数 | 74 | 117 | 225 |
食支援新患紹介元
2020年 | 2021年 | 2022年 | |
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脳神経外科 | 25 | 31 | 67 |
呼吸器内科 | 28 | 33 | 39 |
口腔外科 | 19 | 19 | 23 |
循環器内科 | 18 | 20 | 23 |
消化器内科 | 17 | 31 | 25 |
循環器内科 | 18 | 20 | 23 |
整形外科 | 10 | 17 | 15 |
糖尿病内科 | 8 | 10 | 9 |
その他(外来など) | 19 | 23 | 46 |
周術期等口腔機能管理実績
2019年 | 2020年 | 2021年 | 2022年 | |
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新患数 | 349 | 438 | 438 | 438 |
介入数(総数) | 850 | 1200 | 1340 | 1460 |
スタッフ紹介
谷口裕重 | 口腔管理・食支援センター長(摂食嚥下リハビリテーション学分野 教授) |
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メッセージ
近年、摂食嚥下障害の病態は複雑化しています。従来の脳血管疾患、神経筋疾患に加えて、消化器疾患、循環器疾患、腎疾患、骨折、加齢などを起因とした廃用症候群やサルコペニアによる摂食嚥下障害が増加しています。
このような病態および繰り返す誤嚥性肺炎に対応するため、当院では岐阜県では数少ない、摂食嚥下リハビリテーションのスペシャリストが在籍しております。多職種で構成される摂食嚥下サポートチームが「食支援」「嚥下パス」を重点的に実施することで、より質の高い医療の提供を目指しております。さらに、本学の特徴である「歯科」が全病棟に介入することで、医科歯科連携・口腔管理を徹底し、誤嚥性肺炎や全身への有害事象の低減に努めています。今までの知識・技術を基盤として、日々変化している摂食嚥下障害の病態にいかに対応すべきか、我々も常に進化しながら最先端の治療および一人一人に寄り添う医療・歯科医療を提供する所存です。