感染症内科の概要
感染症内科は、各種感染症に対して専門的な診断および治療を行う診療科です。各診療科で難治性・原因不明と判断された発熱、咳嗽、咽頭痛、呼吸困難、腹痛、下痢、排尿時痛、皮膚の発赤・腫脹など、感染症に起因する多様な症状を対象とし、肺炎、尿路感染症、胆道感染症、皮膚・軟部組織感染症、菌血症、敗血症をはじめとする幅広い病態に対応いたします。
感染症診療においては、単に抗菌薬を投与するのではなく、感染巣を適切に把握し、原因微生物を可能な限り同定し、患者さんの基礎疾患や全身状態を踏まえたうえで、最適な治療戦略を立案することが重要です。当科では、詳細な問診・身体診察を基盤として、各種培養検査、画像診断、迅速検査、遺伝子学的検査などを適切に組み合わせ、科学的根拠に基づく感染症診療を実践します。
また、感染症は単一診療科のみで完結することが少なく、呼吸器内科、消化器内科、外科、泌尿器科、整形外科、救急部門、集中治療部門などの多領域にまたがる連携が不可欠です。当科では院内各診療科と緊密に協力しながら、複雑かつ重症な感染症にも対応し、病院全体の感染症診療の質向上に寄与することを目指します。
さらに、感染症の診療は治療のみならず予防を含めて完結するものと考えています。この観点から、当科ではワクチン外来を設け、成人を中心とした各種予防接種、基礎疾患を有する患者さんに対する感染予防、医療従事者や実習生、海外渡航予定者に対するワクチン相談にも対応し、予防医学の推進にも努めてまいります。
また、現在の診療部長は、日本東洋医学会の漢方専門医・指導医であることから、感染症に限らずさまざまな疾患に対する東洋医学的診察・診療も実施できます。
主な対象疾患
当科では、以下のような感染症を主な対象としています。
| 病名 |
|---|
| 市中肺炎、誤嚥性肺炎、医療関連肺炎などの難治性呼吸器感染症 |
| インフルエンザ、新型コロナウイルス感染症などの難治性ウイルス感染症 |
| 膀胱炎、腎盂腎炎、前立腺炎などの難治性尿路感染症 |
| 胆管炎、胆嚢炎、腹腔内感染症、感染性腸炎などの難治性消化器・肝胆道系感染症 |
| 蜂窩織炎、皮膚膿瘍、術後創部感染などの難治性あるいは原因不明の皮膚・軟部組織感染症 |
| 菌血症、敗血症、感染性心内膜炎などの難治性全身性感染症 |
| 骨髄炎、化膿性関節炎などの難治性骨・関節感染症 |
| 髄膜炎などの難治性あるいは原因不明の中枢神経系感染症 原因検索を要する不明熱、反復性発熱 |
| 原因検索を要する不明熱、反復性発熱 |
| 薬剤耐性菌感染症 |
| 梅毒、淋菌感染症、クラミジア感染症、マイコプラズマ属・ウレアプラズマ属による感染症などの性感染症 |
| 免疫機能低下患者における感染症 |
| 各種ワクチンにより予防可能な感染症 |
| 漢方医学的診察(感染症以外にも対応可能) |
診療内容
当科では、感染症の診断と治療に際し、局所感染にとどまらず全身状態を含めた総合的な評価を可能な限り実施します。発熱や炎症反応上昇を認める症例に対しては、感染症の存在そのものを慎重に見極めるとともに、感染臓器の同定、原因微生物の推定・確認、重症度評価、基礎疾患や併存症の把握を通じて、最も適切な治療方針を決定いたします。
外来診療においては、発熱、遷延する咳嗽、尿路感染症の反復、皮膚感染症、感染症罹患後の経過観察などに対応し、必要に応じて精密検査や入院治療へとつなげます。入院診療においては、重症肺炎、敗血症、胆道感染症、菌血症など、全身管理を要する症例に対して、他診療科と連携しながら集学的に診療を進めます。
また、大学病院における感染症内科の重要な役割の一つとして、院内各診療科からの感染症コンサルテーションがあります。血液培養陽性例、診断に難渋する感染症、治療反応が乏しい症例、薬剤耐性菌が関与する症例などに対して、専門的見地から診断および治療の支援を行います。
さらに、抗菌薬適正使用は現代の感染症診療における極めて重要な課題です。当科では、患者さんにとって必要十分な抗菌薬治療を追求し、有効性と安全性の両立を図るとともに、薬剤耐性菌出現の抑制にも配慮した診療を行います。
主な検査と治療について
- ①培養検査
- ②血液検査・炎症マーカー評価
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白血球数、CRPをはじめとする炎症関連指標を用いて、感染症の活動性や重症度を総合的に評価します。
- ③迅速抗原検査・遺伝子学的検査
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インフルエンザ、新型コロナウイルス感染症、溶連菌感染症などについて、迅速性が求められる場面では各種迅速診断法を活用します。
- ④画像診断との連携
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胸部X線検査、CT検査、超音波検査などを活用し、肺炎、腹腔内感染症、胆道感染症、膿瘍形成の有無などを精査します。
- ⑤抗菌薬・抗ウイルス薬治療
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感染症の種類、重症度、臓器障害の有無、培養結果、患者背景を総合的に考慮し、最適な薬物治療を選択します。
- ⑥重症感染症管理
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敗血症をはじめとする重症感染症に対しては、全身管理を含めた集中的治療を行い、必要に応じて関連各科と連携して対応します。
- ⑦不明熱の精査
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感染症のみならず、膠原病・自己免疫疾患、悪性腫瘍なども鑑別に含めながら、全身的観点から原因検索を進めます。
- ⑧薬剤耐性菌感染症への対応
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耐性菌感染症に対しては、感染制御部門とも連携しつつ、適切な治療選択と感染拡大防止の両面から対応します。
- ⑨院内コンサルテーション
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院内各診療科からの相談に応じ、複雑な感染症症例や抗菌薬選択に関する専門的助言を行います。
- ⑩ワクチン外来
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各種予防接種の適応判断、接種計画の立案、基礎疾患を有する患者さんや医療従事者へのワクチン相談を行います。
ワクチン外来
ワクチン外来では、感染症の発症予防および重症化予防を目的として、成人を中心とした各種予防接種を実施いたします。近年、高齢化の進展や基礎疾患を有する患者さんの増加に伴い、感染症予防の重要性は一層高まっています。ワクチンは、個人の健康を守るのみならず、家庭や地域、医療現場における感染拡大防止にも資する重要な医療手段です。
当外来では、インフルエンザワクチン、肺炎球菌ワクチン、RSウイルスワクチン、新型コロナウイルスワクチン、帯状疱疹ワクチン、B型肝炎ワクチン、麻しん・風しんワクチン、水痘ワクチン、ムンプス(おたふくかぜ)ワクチン、破傷風トキソイド、百日咳ワクチン、ジフテリアワクチン、不活化ポリオワクチン、Hib(インフルエンザ菌b型)感染症ワクチン、日本脳炎ワクチン、A型肝炎ワクチン、B型肝炎ワクチン、狂犬病ワクチン、腸チフスワクチン、ダニ媒介性脳炎ワクチン、ツべリクリン反応、BCGなど、年齢、基礎疾患、生活環境、職業上の曝露リスク、渡航予定などを考慮して、黄熱病ワクチン以外のワクチン接種に対応します。ワクチンと同様自費対応になりますが、マラリア予防薬、高山病予防薬、インフルエンザ発症リスクを下げる予防薬、コロナ発症リスクを下げる予防薬にも対応可能です。
また、接種歴が不明な場合や、複数ワクチンの接種間隔・優先順位について判断が必要な場合にも、専門的立場から丁寧にご説明いたします。医療系学生・実習生・医療従事者のワクチン管理、進学・就職時の接種相談、海外渡航時に必要な予防接種についても対応可能です。
感染症診療は、発症後の治療に加えて、発症を未然に防ぐ予防医療を含めて初めて十分なものとなります。当科では、ワクチン外来を通じて、地域の皆さまの健康維持と安全な医療環境の構築に貢献してまいります。
実績
感染症内科は朝日大学病院に2026 年4月に新設された診療科です。感染症内科では、呼吸器感染症、尿路感染症、胆道感染症、皮膚・軟部組織感染症、菌血症、敗血症など、多岐にわたる感染症診療に対応してまいります。加えて、院内各診療科と連携し、難治性感染症、重症感染症、薬剤耐性菌感染症への専門的対応、抗菌薬適正使用支援、感染予防体制の充実に取り組みます。
新設診療科として、今後は地域医療機関との連携をさらに深め、地域に根ざした高度な感染症診療体制の構築を進めるとともに、大学病院としての専門性を生かし、診療・教育・感染予防の各側面から地域医療へ貢献してまいります。
スタッフ紹介
部長メッセージ
感染症は、日常診療で遭遇する頻度の高い疾患群である一方で、重症化や全身化を来し得る病態であり、時に迅速かつ高度な専門的判断が求められます。さらに、高齢化社会の進展、基礎疾患を有する患者さんの増加、医療の高度化、さらには薬剤耐性菌の拡大などを背景として、感染症診療の重要性は従来にも増して高まっています。
このたび朝日大学病院に感染症内科が新設され、感染症を専門とする立場から、地域の皆さまにより質の高い医療を提供できる体制が整いました。当科では、患者さん一人ひとりの病態を丁寧に把握し、科学的根拠に基づいた診断と治療を行うことを基本姿勢としています。また、感染症はしばしば複数診療科に関わるため、院内各科と緊密に連携しながら、より適切で安全な医療の実践に努めてまいります。
加えて、感染症診療においては、発症後の治療のみならず、ワクチンをはじめとする予防医療の推進も不可欠です。当科ではワクチン外来を通じて、地域住民の皆さま、基礎疾患を有する患者さん、医療従事者、実習生等に対する予防接種支援にも力を注ぎ、地域全体の感染症対策に寄与したいと考えております。
今後は、地域医療機関の先生方との連携を大切にしながら、朝日大学病院における感染症診療の充実を図り、地域に信頼される診療科となるよう努めてまいります。感染症に関してお困りのことがございましたら、どうぞお気軽にご相談ください。
感染症内科 診療部長 三鴨廣繁